祝!「鎌倉殿の13人」放送決定
2021.11.7
 いまさらながら来年放送開始のNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のPR文をトップページに追加しておいた。大河ドラマで中世が舞台になるのは久々…というわけでもないのだが、鎌倉時代をテーマにしたものは2005年の「義経」以来である(2012年には「平清盛」がやっていたが、あれはあくまで平安時代後期、しかも平清盛が主人公なわけで…)。おまけに北条氏が主人公となるのは、2001年の『北条時宗』以来、そして鎌倉だけが舞台となる(のかはよく知らないが)初ではなかろうか。
 しかも主人公は北条義時というコアなところ。それを小栗旬さんが演じるのだから、北条義時の認知度も上がるのであろうか。来年はこの「鎌倉史跡・寺社データベース」自体も開設から20年目を迎える。何やら縁を感じて嬉しい。自分が中学生の頃、鎌倉の町に関心を持ち出した頃、ちょうど「北条時宗」がやっていて、それから20年後であるから、このホームページの節目に大河ドラマがセットになって鎌倉の町にやってくるところが因縁めいている。

 しかし、自分にとってこの大河ドラマの放送が嬉しいのはタイトルに「13人」とついているところだ。この「13人」とは源頼朝の死後、偉大なる「鎌倉殿」を失った鎌倉幕府の有力御家人たちが源頼家の独裁を抑える目的で集結した「13人の合議」に由来するものであろう。

自分にとって鎌倉幕府の「合議」というのは、大学生時代に常に頭の中について回った言葉であった。自分の研究対象は鎌倉幕府の組織論で、そうなると自分の大学生時代はこの「合議」の正体というものを知りたいと常に考えながら過ごした6年間(学部生の4年間と修士の2年間)であった。結局のところ、鎌倉幕府の合議の正体を知ろうにも、史料は『吾妻鑑』くらいしかないものだから、自分の卒業論文は実にまとまりのない、何が言いたいのかよくわからないものになってしまった。修士論文はもう少しその他の古文書を史料に使えるようにと、鎌倉幕府の合議の中で形成された評定衆にスポットを当て、評定衆そのものや評定衆の仕事について考察を深めたが、どこか中途半端な結論に終始してしまった。

結果、大学を出てから今まで一本の論文も出すことなく、自分の鎌倉幕府の研究は終わった。もう少し根気よく、他の研究者がそうであるように、多大な熱量を注いで研究に打ち込めば、一本くらい論文も書けたかなぁとは思うのだが、学生時代の後半は就職先の心配ばかりするようになって、何になるかよくわからない研究に打ち込む熱意を失ってしまった。

その後、高等学校の教師となって、生徒たちに歴史を教えているが、普段の授業の言葉の端々に「俺は鎌倉時代の研究者」という「におわせ」を癖でしてしまうところがいやらしくて、自分でも辟易とする。本当はちょっと詳しいだけで、何も知りはしないのに。

だから、このドラマを私は純粋な気持ちでみたい。研究史とか学説とか、そういうことからいったん離れて、純粋に鎌倉時代を楽しみたい。それはかつて少年の頃、家にあった『かまくら子ども風土記』を読みながら、頭の中で頼朝や政子、北条義時や泰時たちが活躍する姿を思い浮かべたように。

義時と言えば特に二階堂の覚園寺の寺伝や『吾妻鑑』にいう、実朝が承久元年に暗殺された際、十二神将のうちの戌の神将が義時に警告して難を逃れたという話が印象的だ。どうで、それを本当の話だと思うことは少年の時からすでにできなかったが、それでもあの緊張感のあるシーンと覚園寺の神秘的な雰囲気が合わさって、良いお話であった。あの話、大河ドラマではどう描かれるのであろうか。いまから放送が楽しみでならない。

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